〜第六話 「時をかける少女」墓地にて〜


墓地――――夜

【真里野】
 む……無念でござる。
 まさか……、女子に敗れようとは。
 いや――――、
 そなたに敗れたという事は葉佩 九龍に敗れたという事も同然。
 拙者は、生まれてからずっと剣の道に生きてきた。
 ずっと、ただ己を鍛錬するためだけに、修行に明け暮れる日々を送ってきた。
 ただ、己の技を高めるために。そして、崇高なる道の果てを垣間見んがために。
 その悲願が、このような形で潰える事になろうとは……。
 しかも、策に嵌ったとはいえ剣の道とは程遠い女子の手によって……。
 不甲斐無きは、この腕よ。真里野家の御先祖様に合わす顔がないわ。
 かくなる上は、腹を捌いて自決するのみ。



『止める』

【真里野】
 と、止めて下さるなッ!!拙者は、拙者はァァァッ!!
 拙者は……うう……、せっ……しゃは……。
 うううッ……。
 ……。
 ……。
 拙者を止めたそなたの温かい手……。
 そなたは、拙者に生きよ――――というのか?
 そなたのように葉佩のために……。


『友』

【真里野】
 うむ。拙者もそなたと共にこの剣を捧げ、戦おう。
 そうだ――――。    [SE]お主に、これを進ぜよう  『真里野のプリクラGET』

『燃』

【真里野】
 うむ。拙者もそなたと共にこの剣を捧げ、戦おう。
 そうだ――――。    [SE]お主に、これを進ぜよう  『真里野のプリクラGET』

『喜』

【真里野】
 そうだな。確かに死ぬだけが武士道ではない。
 そうだ――――。    [SE]お主に、これを進ぜよう  『真里野のプリクラGET』

『愛』

【真里野】
 分かり申した……。
 拙者もそなたと共にこの剣を捧げ、戦おう。
 そうだ――――。    [SE]お主に、これを進ぜよう  『真里野のプリクラGET』

『憂』

【真里野】
 それは、拙者に葉佩のためでなく自分のために生きろと?
 そなたという女子は……。
 ふッ……。拙者もまだまだ未熟よ。

『悲』

【真里野】
 何故、斯様に悲しげな瞳をするのだ?
 それは、拙者に葉佩のためでなく自分のために生きろと?
 そなたという女子は……。
 ふッ……。拙者もまだまだ未熟よ。

『寒』

【真里野】
 それは、拙者に葉佩のためでなく自分のために生きろと?
 そなたという女子は……。
 ふッ……。拙者もまだまだ未熟よ。

『怒』

【真里野】
 それは、拙者に葉佩のためでなく自分のために生きろと?
 そなたという女子は……。
 ふッ……。拙者もまだまだ未熟よ。

『無』

【真里野】
 何故、黙っておるのだ?
 それは、拙者に葉佩のためでなく自分のために生きろと?
 そなたという女子は……。
 ふッ……。拙者もまだまだ未熟よ。



【真里野】
 拙者……、そなたに出逢えて良かった。
 あッ、いや、勘違いしないでくれッ!!
 別に深い意味でいったのではない。
 うッ、うおっほんッ。
 ……。
 不思議だ……。お主のような女子と葉佩に敗れ、
 拙者は、何か生まれ変わったような気がする。
 ありがとう……。いろいろと。
 ……。
 では、また会おう。
 さらばだ――――。

【朱堂】
 ああん、剣介ちゃん、待って〜。
 それじゃ、七瀬サン。
 おやすみ〜、また明日ね。     [SE]ヒュー……



『止めない』

【真里野】
 拙者は……いつの日か剣の道の果てに……。ただそれだけを……。   [SE]ドサッ
 拙者は……うう……っせっ……しゃは……。
 うううッ……。
 拙者は、どうしたらいいのだ?剣を手にどう生きていけばいいのだ?
 教えてくれ……。   [SE]タッタッタッ

【朱堂】
 バカッ!!    [SE]パンッ

【真里野】
 あうッ。     [SE]ドサッ

【朱堂】
 剣介ちゃんのバカバカッ!!

【真里野】
 茂美殿……、何故、ここに?

【朱堂】
 クラスメートとして、剣介ちゃんの事が心配でずっと後を尾けてたのよ。

【真里野】
 では、戦いの一部始終も?

【朱堂】
 えェ。見ていたわ。

【真里野】
 無様な姿を晒して、申し訳御座らぬ……。拙者はもう――――、

【朱堂】
 何で、一回負けたぐらいで挫けるのよッ。

【真里野】
 ……?

【朱堂】
 負けたって、アナタの剣の道が終わった訳じゃないでしょッ?
 それとも、アナタの信念は、そんなものだったのッ!?
 それで終わりにできるぐらい簡単なものだったのッ!?

【真里野】
 拙者の剣の道……?

【朱堂】
 そうよ。
 アナタがアナタらしく生きられる道――――。
 その道が、ここで終わりだなんてアタシは思いたくない。

【真里野】
 ……。

【朱堂】
 立って……。そして、顔を上げて。
 ゆっくりと目を閉じてごらんなさい。
 そこに、何が見えるのか……。

【真里野】
 ……見える。一筋の光明が。
 これが、拙者の信念の光――――。

【朱堂】
 えェ、そうよ……。

【真里野】
 ……。

【朱堂】
 ……。

【真里野】
 ……。

【朱堂】
 ……。 (唇を真里野に迫らせている)←ここ四倍角   [SE]チャキンッ
 うぎゃァァァァァァッ!!

【真里野】
 む?いかがなされた、茂美殿?

【朱堂】
 ぐおおおお……。

【真里野】
 安心して下され。峰打ちでござる。

【朱堂】
 うぐォォォ……え?あッ、ホントだわ。

【真里野】
 ふいに殺気を感じた故、つい抜刀してしまった。
 許されよ。
 ……確かに、茂美殿のいう通りかもしれぬな。
 拙者が、こうして剣を振るう限り、道もまた途切れてはおらぬ。
 ……。
 不思議だ……。お主のような女子と葉佩に敗れ、
 拙者は、何か生まれ変わったような気がする。
 ありがとう……。いろいろと。
 ……。
 では、また会おう。
 さらばだ――――。

【朱堂】
 ああん、剣介ちゃん、待って〜。
 それじゃ、七瀬サン。
 おやすみ〜、また明日ね。     [SE]ヒュー……