〜第十一話 「ねらわれた学園」放課後自由行動・武道場にて〜


【真里野】
 なあ、師匠。お主――――
 人を好きになったことは、あるか……?


『友』

【真里野】
 そうか。まあ、お主なら当然そういったことは経験済みだろうな。
 ……あッ、いや、別にこの問いには、これといった意味はないのだ。忘れてくれ。
 ……。

『燃』

【真里野】
 己が燃えあがるほどに好きになった人がいるのか……なるほど。
 あッ、いや、別にこの問いには、これといった意味はないのだ。忘れてくれ。
 ……。

『喜』

【真里野】
 そうか。
 お主のその顔を見る限り、人を好きになるということは楽しいことなのだろうな。
 しかし、それにしては……。
 あッ、いや、別にこの問いには、これといった意味はないのだ。忘れてくれ。
 ……。

『愛』

【真里野】
 なッ……い、いきなりなにを言い出すのだ、お主はッ。
 まったく……人をからかうにも程があるだろうッ。
 ……。

『憂』

【真里野】
 そうか……お主にはそういう経験がないのか。正直意外だな。
 お主ならば、この道は百戦錬磨だろうと考えていたのだが……。
 あッ、いや、別にこの問いには、これといった意味はないのだ。忘れてくれ。
 ……。

『悲』

【真里野】
 そうか……お主にはそういう経験がないのか。正直意外だな。
 お主ならば、この道は百戦錬磨だろうと考えていたのだが……。
 あッ、いや、別にこの問いには、これといった意味はないのだ。忘れてくれ。
 ……。

『寒』

【真里野】
 ふむ……その手のことには興味がない、ということか。正直意外だな……。
 あッ、いや、別にこの問いには、これといった意味はないのだ。忘れてくれ。
 ……。

『怒』

【真里野】
 む……してはならぬ質問だったようだな。これは失礼した。
 ……。

『無』

【真里野】
 ……聞こえなかったのか。ならば、そのまま聞き流してくれ。
 ……。